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夢の話(1)

いつもお尻をくっつけてお互いを確認していたでんとケフィ

 最近、ふと思う。

「もしかしたら、でんやケフィがこの世に存在したこと自体が夢だったんじゃないか」と。

 夜になると布団にもぐりこんでくるでんすけがいて、朝起きると抱きついてくるケフィがいた。毎日、日だまりを追いかけながら昼寝するでんすけがいて、どこまでも一緒に歩き続けるケフィがいた。

 ひざの上にでんの重みを感じながら仕事をしたり、私がちょっと移動するたびについて回るケフィに話しかけながら過ごした。いつでも足下に愛する者のぬくもりを感じ、ほおずりしたり、抱きしめたりした。

 でんすけの元気な声が家中に響き、ケフィの笑顔が家族を照らしていた。ふたりが仲良くお尻をくっつけながらリビングでお昼寝したり、おいかけっこをしていた。

長い夢?

でんすけの分とペアで届いた人形たち そんな日々は実はぜーんぶ夢で、「私は長い長い長い幸せな眠りのなかにいたのではないのか」と思ったりする。

 もしそうだとしたら私は何も悲しむ必要は無い。あれが夢の中での出来事だったとしたら。もうため息をつく必要もない。私はなにひとつ失っていないのだから。

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間違いなく存在した

豪華なカサブランカの花 束も だけど家の中には確かにいくつもケフィがひっかいた痕が残っている。障子にはでんすけがたてた爪痕もはっきりとある。布団や服、靴の中からふたりの毛が出て来ることがあるし、今までに見送ったコたちとの写真に並んでふたりの写真があちこちに置かれている。

 今もでんやケフィを悼む花や思い出の写真集、人形などの贈り物が届くし、それらは骨壺のすぐそばに飾られている。

 やっぱりふたりは間違いなくこの世に存在した。長い間、一緒に時を刻み、私にたくさんの笑顔や幸せな時間をくれて、心の支えとなってくれた。
 そうしてほんとうに数え切れないほどの思い出を置いて、虹の橋へと旅立って行ったのだ。

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夢の話(2)

 橋を渡った動物たちはどこでどんなふうに暮らすのか。友人が2冊の絵本を送ってくれた。『虹の橋―Rainbow Bridge』(佼成出版社)と『ねこたちのてんごく』(ひさかたチャイルド )だ。

 どちらの本も「死後も犬や猫はとてもとてもとても幸せに暮らしながら、『かわいがってくれた人』のことを思っている」という。「いつかまた必ず一緒に暮らすことができる」(『虹の橋』)し、人間が知らないうちに「大好きだった人たちの様子を静かに見ていることもある」(『ねこたちのてんごく』)という。

毛皮を着替えて会いに来てる?

いちばん最初にタリを見かけたときもこのシチュエーシ ョンだった もし、そのとおりなら私はまたきっとふたりに会える。ふたりだけでなく、今までに見送ったかけがえのない命たちと、また共に暮らせるのだ。
 そしてでんはときどき我が家を訪ね私の様子をそっと見ていることがあるはずだ。

 そんなことを考えていたら、本当に猫がやって来た! 人が近寄ってもまったく逃げない。窓を開けても少しバックするくらい。まるで「家の様子を見に来たよ」という感じ。かつてのタリを彷彿とさせる。
 
 思えばタリが初めて姿を見せたのは、でんが亡くなった約一月後。今回の猫もケフィが亡くなってほぼ一月がたった頃に現れた。

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みんなで会いにきてよ

カメラを向けてもまるでに気にせず もしかしたら、でんはほんとうに毛皮を着替えてときどき様子を見に来ているのかもしれない。

「ケフィまでいなくなっちゃって、大丈夫かしら」「タマとタリはちゃんと人間をサポートしてる?」と気遣って。
 そして虹の橋に戻って行っては、ケフィやりゅうやアサりんたちみんなに見たことを報告し、話合っているのかもしれない。「どうしたら人間が元気になるかしら」と意見を募って、また様子を見に来ようとしているのかもしれない。

 しっかり者で世話好きのでんのことだから、十分にあり得る話だ。

 ・・・そんな夢みたいな話をつらつらと考えながら、今日も夢みたいなことを願っている。
「夢でも幻でも、魂でも影でもいい。みんなで会いに来てよ」と。

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揺り戻し

お昼寝中に起こされてちょっと不機嫌? な でんすけ 一時期は少し落ち着いたのに、最近またケフィやでんのことを思い出しては涙することが増えた。ふたりの夢を見ることもしょっちゅうで、夜中に何度も目が覚める。
 職場にいても、歩いていても、電車に乗っていても、いつのまにかふたりのことが頭に浮かび、うっかりすると涙が頬を伝わっていて自分でびっくりしたりする。

 だから出歩くときにはサングラスと大判マスクが欠かせない。幸いなことに世の中は花粉症の最盛期。同じようなスタイルの人がたくさんいて目立つ心配はなさそうだ。

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春のせい

 どうしてまたこんな揺り戻しが起きているのだろう? ひとつの理由は、きっと日増しに春めいてきた陽気のせいだ。

 光の強さが増し、影が濃くなってきた。少しずつ冬が遠のき、春の足音が大きくなった。庭のサンショウは丸いビーズのような新芽の“もと”を蓄えはじめ、ケフィが大好きな南の島から持って帰った長命草は若葉が芽吹きはじめた。
 
 公園ではユキヤナギがぽつぽつと白いつぼみを付け始め、でんとケフィが大好きでしょっちゅう匂いを嗅いだり、かじったりしていた“つんつん”とした雑草の勢いも増している。なのにでんとケフィの姿はない。

置いてけぼりのまま

でんすけと旅行した瀬戸内海の島で海を眺めるケフィ もうひとつは、この冬はいつもの半分くらいしか活躍しなかったニットの帽子を洗ったせいに違いない。

 ケフィの散歩のときにずっとかぶっていたニット帽。例年ならニット帽をしまったら、キャップが登場するのが常だった。そうして「散歩用グッズ」たちも季節に応じて少しずつ入れ替わっていった。だけど今年はキャップはまだ棚の奥にしまわれたままだ。

 もう少し太陽の勢いが増したら、今度はキャップの代わりにつばの広いUVカット効果がある帽子の出番。でもたぶん今年はUVカットの帽子はそんなに重宝されないだろう。

「散歩用グッズ」のマフラーがスカーフに、ダウンコートがウィンドブレーカーに替わる季節がきたのに。季節はそうやっていつも通りまた巡っていくのに、そこにケフィはいない。

 ケフィのことも、ケフィへの思いも、置いてけぼりのまま季節だけが入れ替わっていく。

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上を向いて歩こう

毛皮をかぶったでん けっこうな揺り戻しが続いている

 やっぱりこの春という季節がよくないらしい。街を歩いていても、道ばたに緑の芽吹きを見つけたり、元気に散歩する犬や日なたぼっこをする猫の姿が目につくようになった。冬の間は縮こまっていた命が、一斉に“のび”をして動き始めたような生命力を感じる。
 そんな命の輝きが、遠い世界のことのように思えてしまう。

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DMやカタログ
 
 毎日あちこちから届く「決算セール」のDMやカタログも良くない。見ないで捨ててしまえばいいのに、ついつい見てしまう。

「こんなの買ってあげたらケフィが喜ぶかな」
「これはケフィが好きそうだ」

 そんなことを思っては「もう必要ないじゃん!」と自分で突っ込み、落ち込んでいる。昨年の11月から12月はケフィの体によさそうなものを買いあさっていたから、その数もはんぱではない。

芋づる式

寒くても生命力全開だったケフィ そうやってケフィのことで落ち込んでいると芋づる式にでんのことが浮かんでくる。

 でんが亡くなったのは、もう1年半も前なのに。だいぶ「でんがいない毎日」に慣れたつもりでいたのに。ケフィのことを考えていると、どうしてもケフィとでんがいた毎日のことが思い出され、悲しみが二倍になってしまう。

 ようやくふさがった傷が、すぐそばにできた新しい傷の痛みでうずくかのように、ケフィを失った寂しさがでんを失った寂しさを思い出させる。まるで悲しみが悲しみを引き寄せているようだ。


心は立ち止まったまま

 だから最近は上を向いて歩いている。道ばたにうっかり春の兆しを見つけてしまわないように。天国から見ているだろう、でんやケフィが私を見つけやすいように。涙がこぼれてしまわないように。往年のヒット曲の歌詞はあながち嘘ではなかったらしい。

 ふたりがいない毎日に少しは慣れたつもりだったのに、心はずっと立ち止まったまま。季節だけが私を追い越して行く。
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ミーちゃんのご縁で取材を受けた

最初の行方不明後、戻って来てばく睡中の ミーちゃん ミーちゃんのご縁で、昨年からさいたま市岩槻区で展開されている地域興しのための「岩槻ひまわりプロジェクト@地域猫ご縁」について地域新聞の取材を受けた。

 ミーちゃんを探す過程を描いたブログが本になり、それもとに映画『先生と迷い猫』が制作された。そして昨年、映画と一緒に「岩槻映画祭」に招いていただいた。

 そこでつながった地域の方々が、私も子どもの権利条約日本(CRC日本)の活動として震災以降続けてきた「自宅や地域でひまわりを育て、その種を福島市の障害者支援団体NPO法人シャロームへ届けてひまわり油づくりに役立ててもらう」という活動に興味を持ってくださり、始まったプロジェクトだ(岩槻ひまわりPJ♥地域猫ご縁)。

 昨年は、約30もの個人・団体が参加してくださった。それを「もっと広く知ってもらって、みんなに楽しく参加してもらおう!」(取材者)というのだ。本当にありがたい!!

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ミーちゃんへの恩返しは?

知人 が見つけた『先生と迷い猫』上映会と地域猫を考える集まりのお知らせ ミーちゃんが姿を消したのは2008年。それからもう今年で9年になろうとしている。それでもまだ、こうして地域に貢献し、いろいろな関係性をつなぎ続けているのだからミーちゃんは本当にただ猫ではない。
 
 最近「都内のとある商店街を通っていたら『映画鑑賞後、地域猫について考えましょう』という掲示板を見た」という情報も得た(写真)。ミーちゃんは、遠くの地域猫たちをも救っているのだ!

 そんなミーちゃんに、私はどれだけ恩返しができているのだろうか。
 なんだかんだと言っても、ケフィやでんは最期まで面倒をみてあげられた。足りなかったことや至らなかったこともあるけれど、それなりに「やりきった」感もある。

 だけど、ミーちゃんは違う。「連れ去られないようもっとしっかりチームをつくって世話をすれば」、「何が何でも特定の飼い主を探すべきだったのでは」、「探す場所をもっと広げていたら」などなど、悔やむことばかりである。
 
 愛する命が消えていくのを見送ることもつらいけれど、帰ってくるかどうか分からない存在を待ち続けることも辛い。期待や後悔がずっと大きくなってしまうから。


ミーちゃんは今どこに

 行方不明当時、すでに推定13歳だったミーちゃん。生きていれば20歳を超えている。果たしてミーちゃんが今もどこかで元気に暮らしているのか・・・。ずっと望んでは来たけれど現実的はかなり難しいのではないかと、うっすらと分かっている。

 だけどもし、万が一、たとえばの話ではあるが、ミーちゃんも虹の橋を渡っていたとしたら、今頃はでんやケフィと合流しているのではないか。我が家の動物たちと一緒に、遊んだり、のんびりしたりしながら、ときどきは商店街のみんなのことを思い出し、そっと会いに来てくれているのだろうか。

 そして、地域をつなぐひまわりプロジェクトを応援してくれているに違いない。

見えないケフィと暮らして3カ月

ハスキーのグレイの後ろ姿がなんともかわいい『グレイがまってるから』(中公文庫) もうすぐケフィが天に昇って3カ月になる。
 
 ふいに『グレイがまってるから』(中公文庫)が読みたくなって手に取った。絵本作家の伊勢英子さんが、わずか5歳で癌によって亡くなった愛犬・グレイ(ハスキー)との生活やグレイへの思い、「犬の愛おしさ」について書いた作品である。

 思い起こせば、この本を買ったのは先代犬・りゅうが亡くなった直後だった。本屋で、まるで何かに導かれるように手に取ったこの本はなんとも言えない犬との幸せな毎日が描かれ、哀しい別離で締めくくられていた。

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本の影響

雪の見納めとなった昨年11月末 りゅうを失った後、同書と、その続編である『気分はおすわりの日』(中公文庫)を何度も繰り返し読んだ。考えてみれば「大型犬っていいな」と思いはじめたのは、これらの本の影響だったのかもしれない。

 今日まで忘れていたがケフィが子犬だった頃、「ケフィはグレイの年まで生きられるか」と不安だった。その後、テレビ東京のバラエティ番組『ペット大集合! ポチたま』に出演していたまさおくん(ラブラドール・レトリーバー)が悪性リンパ腫のため7歳で亡くなったと知り、「ケフィは7歳を超えられるのか」と気が気ではなかった。


「不在」を数えながら

 同書の最終章「グレイが何を待っていたのか ききそびれた話」で、空へと駆けていったグレイを見送った伊勢さんは「それから私は 風をおいかけることも 季節が変わることも 時の存在も忘れた。欲もおしゃれもなく 夢も発見もなく ことばさえ忘れ 私はただのおばさんになった」(185~186ページ)と書かいている。今の私と同じだ。

 そして「見えない犬と暮らしはじめて三カ月たとうとしている」と、こう著している。

「『気配』というものは『存在』『実存』あってこそ感じるものらしい。『気配』だけでも感じたい、と思っても想像力を駆使して『不在』というフィルターを通して逆説的に思い起こすしかない」(186ページ)

 もしかしたら私が「揺り戻し」と思っている現象は、三ヶ月がたってケフィの「不在」を実感せざるを得ないシーンをいくつも経たがゆえの寂しさなのかもしれない。

 ケフィの「不在」を数えながら、今も私はそうして見えないケフィと暮らしているのだ。
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ブログリニューアル
このブログは「ミーちゃんを探して」を2017年2月20日にリニューアルしました。
ブログについて
さいたま市岩槻区で地域猫として住民に愛されていた三毛猫の「ミーちゃん」。 このブログはまず、2008年に行方不明になったミーちゃんの情報収集のためにつくられました。 […続きを読む
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